融資と助言を通して、企業成長・再生を担う 融資と助言を通して、企業成長・再生を担う

名古屋キャピタルパートナーズ
岡本 哲郎
地元企業の可能性を、開くことができるか。

戦後の日本経済の成長に大きな影響を与えた銀行。メインバンクとして企業に資金提供を行い、企業経営やコーポレートガバナンスにも関与する等企業と二人三脚で歩んできた。いわば、お金も出すし、口も出す。しかしながら、金融の自由化や資金調達方法の多様化により、銀行の役割は資金提供中心に変化した。それでも、地元企業の可能性を開くためには、積極的に「口も出す」ことが必要と考えて設立された組織が名古屋キャピタルパートナーズだ。

支店から大学院を経て、経営企画部、金融投資部から、投資専門子会社へ 支店から大学院を経て、経営企画部、金融投資部から、投資専門子会社へ

岡本は、異色の経歴の持ち主だ。学部時代は工学部で化学を専攻。電子顕微鏡を用いて、高分子の構造解析をしていた。就職活動時は「どこで働いても同じ」だと考えていたという。言い換えれば「誰かのために働けるなら、どの業種・会社だっていい」という考えでもあった。それは受け身なのではなく、大いなる好奇心だと言える。入行4年目に経営大学院へ入学。MBA(経営学修士)を取得した後、主に上場企業向けの融資を行う専門部隊である東京支店のメンバーになった。その後、経営企画部、金融投資部へとキャリアを積み重ねていく。
岡本は、経営企画部で名古屋銀行の経営戦略を検討する中で、金融だけに限らない中堅・中小企業の実務支援能力が今後必要になると考えていた。そこで、金融投資部にて投資を行った再生ファンドに出向することで、企業の実務支援の現場を経験。ここで鍛えられた岡本に託されたのは、名古屋銀行の100%出資による投資専門子会社「名古屋キャピタルパートナーズ」での取引先企業の再生だ。

お金も出すし、口も出す。全力で寄り添いながら お金も出すし、口も出す。全力で寄り添いながら

2020年に設立された名古屋キャピタルパートナーズ。当社では主に事業承継、ベンチャー支援、事業再生を行うファンドを運営している。岡本が配属された事業再生チームでは、様々な要因から苦境に立たされている企業や外部の力を借りながら更なる成長を目指す企業に対して、資金提供とハンズオン支援を提供している。ハンズオン支援とは、経営課題に対して、投資先と一緒になって課題解決を行うことであり、実際に投資先に行き、ひざ詰めで議論を行う。特に苦境に立たされている企業は、資金もアイデアも足りていないことが多く、どのような施策を実施するかを一緒になって考えることが重要となる。
「投資判断を行う上で投資先が属する市場動向を把握することは欠かせない。ただ、投資先が成長するためには市場動向よりも、その企業が何をするか、何をしなければいかないかの方が重要。これは投資先に寄り添いながら一緒に考えていかなければ見極められない」と岡本。だから「お金も出すし、口も出す」のは、名古屋キャピタルパートナーズの役割だと考えている。

考えて、選んで実行する。そしてまた、考える 考えて、選んで実行する。そしてまた、考える

新規事業のために企業が、ある機械を買いたいと投資を求めてきたとする。それが本当に買うべき機械なのか、他にもっと投資対効果を上げられる機械はないのか。機械を買う方法以外にも、その企業を成長させる方法はないのか。販売先はどう判断するか。新たに興味を持ってくれる企業はあるのか。会社のコア技術は高められるのか。それを高めることに意味はあるのか――。考えて、考えて、考える。その上で投資を決定して実行する。しかし、これで終わりではない。むしろそこからが始まりだ。
計画通りに進んでいるのか、もし進んでいなければ原因は何か。あらゆる調査を繰り返し、原因を探り、最善の解決策を見つけ、経営者に提案し、ともに検討し、決定して実行。当然、それで終わりではなく、同じサイクルを何度も繰り返す。「自分の判断で、取引先企業が損をしてしまうかもしれない。だから自分も絶対に手を抜けない」。自分に厳しい岡本らしさが溢れる考えだ。投資先の成長のためにやれることはまだまだある。そう信じて、今日も岡本は考え続けているはずだ。

華やかさはない。でも、やりがいはある 華やかさはない。でも、やりがいはある

岡本がしていることは、企業コンサルタントと何が違うのか。コンサル企業の志望者の多くは「企業の成長に関わりたい」と思っている。コンサル企業の役割はアイデアを提供することであり、当然のことながらそこにコンサル会社自身のリスクは存在しない。その一方で、名古屋キャピタルパートナーズの場合、口を出すだけでなく、お金も出すため、出したアイデアがうまくいかなければ損失が発生する。「投資の損失が出ることは、投資先がより苦境に陥っていることとイコールだ。だから、何としてでも成功する必要があり、必死になって取り組む。我々の仕事は非常に泥臭く、コンサル企業のような華やかさはない。でも、やりがいはある」と岡本。
取引先のために必死に考えて、行動する。名古屋銀行には、その気概がある。取引先を成長させるために、できることを全てする。「投資先を支援するために必要なことは特別な能力でも、知識でも、経験でもない。何とかするという強い思いがあれば、誰にでもできると信じている。このような思いを持った人と仕事をしたい」。困っている企業を支援することが、地域経済を支え、ひいてはその企業に勤める従業員や家族の幸福に繋がる。それは、未来をつくることでもあり、これが地方銀行に今後求められる役割であり、地域金融の最先端だ。