人に寄り添う経営を、社会にも広げていく 人に寄り添う経営を、社会にも広げていく

健康経営推進室
貝瀬 繭子
制度づくりの先には、「働きがい」づくりがあった。

名古屋銀行において、主に人事畑を歩んできた貝瀬。新卒学生の採用業務を経て、近年は「育休」「休職」「復職」「退職」といった社員に対する制度構築や実務に関わっている。その根底にあるのは、だれもが輝ける会社づくりを目指して2018年から行われてきた「輝き方改革」。男性の育休取得、残業時間削減の仕組みづくりなど、様々な制度設計に取り組んできた。貝瀬自身も育児休暇を経て仕事復帰をした経験があり、時間的制限があるなかでパフォーマンスを発揮するために苦心もした。だからこそ「輝き方改革」で創られた制度の基盤をいかに運用してもらえるかに力を注いできた。そして今、健康経営推進室で社員の「働きがい」を高めていく。

制度は整った。しかし他に、できることがある 制度は整った。しかし他に、できることがある

制度が整っても、「ここがゴールではない」という思いが残っていた。「働きやすさ」と「働きがい」は違うのではないかと。これまで貝瀬は、仕事を長期で休まざるを得ない社員を見てきた。特にコロナ禍においてはコミュニケーションの難しさも感じていた。制度を整えるだけではなく、もっと社内全体が制度を使いこなすこと、こちらからアプローチして社員の声を聞くこと。それにより、安心して仕事に打ち込める環境をつくり、働きがいを持って仕事ができる会社にすることこそが、社員の本当の幸せにつながると考えた。その思いが経営層に伝わったのだろう。人材開発部内にあった「輝き方改革推進室」は2022年6月「健康経営推進室」へ再編され、貝瀬もそのメンバーに選ばれた。

健康経営が、会社のおける戦略の重要施策に 健康経営が、会社のおける戦略の重要施策に

健康経営推進室は、そのトップを頭取自身が務め、各部横断組織として、人事を担う人材開発部だけではなく、経営企画部や法人営業部などからもメンバーが集められた。しかも名古屋銀行として健康経営を人的資本戦略の重要施策と位置づけ、その取り組みを通じて「働きがい改革」を推進することになったのだ。
柱は4本。社員の安心感を生み出す「こころの健康づくり」、生活習慣の改善や重症化予防対策を行う「からだの健康づくり」、働き方や職場環境の整備を担う「良い職場環境づくり」、多様な社員が活躍できる体制をつくる「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の実践」をそれぞれチームとなり進めていく。施策としては、例えば社員の声を聞くために保健師が支店に訪問して全員と面談を実施する制度を整えたほか、病気と仕事の両立をサポートする両立支援コーディネートも強化。若手と上司とのコミュニケーション円滑化にも取り組んでいる。

健康経営優良法人2023において全国50位以内に認定 健康経営優良法人2023において全国50位以内に認定

「輝き方改革推進室で基礎がつくられ、健康経営推進室の立ち上げから一気に施策が動き始めました」と貝瀬。急だからこそ反発が出たこともあったが、一つひとつ実績を重ねることで、今や全社的な取り組みとして、効果が見えてきている。
そして、名古屋銀行の取り組みと成果は経済産業省にも認められた。「健康経営推進室」が立ち上がって1年にも満たない2023年3月、健康経営優良法人認定制度※1において、健康経営優良法人2023(大規模法人部門、「ホワイト 500」)に認定されたのだ。しかも、地方銀行では全国トップの水準。貝瀬は「社員が外部評価によって自社に誇りを持ってもらえるのは嬉しいですが、特にトップ水準での評価というのは、これまでの活動への自信に繋がりました。」と、その結果に対する喜びを表現する。

※1「健康経営優良法人認定制度」…経済産業省と日本健康会議が共同で実施する、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業の法人を顕彰する制度です。

自社だけでなく、社会にも健康経営を波及させる 自社だけでなく、社会にも健康経営を波及させる

自社の健康経営推進と両輪で進んでいるのが、取引先企業へのコンサルティングだ。各支店の渉外担当者が取引先に提案できるメニューとして内容を調整。無料で行うものから有料のものまで、多様なサービス展開が可能になっている。「名古屋銀行が行う融資は、単にお金を貸すことではありません。企業が正しい方向に成長していくためのお手伝いこそ、取引先の未来創造です」と考える通り、企業の人的資本戦略の構築・促進においても、その一助となるべく健康経営を普及させている。「その企業で働く方が幸せになること。それこそが、地域を幸せに導いていくことになると思う」と貝瀬。自社における取り組みに自信があり、さらに取引先と向き合う一人ひとりの担当者が満足感を得ているからこそ、取引先におすすめできる。銀行にできること、すべきこと、それはいつも人の幸せを考えることだ。